合掌する縊死者の群 大手拓次
合掌する縊死者の群
雪のやうに降りつもる苦(くる)しさに
身をくねらせて 爪立(つまだ)ち、
ひとつらに合掌(がつしやう)する人人(ひとびと)の群(むれ)。
みなひとしく靑蛇(あをへび)のやうな太紐(ふとひも)にくびをしめくくられ、
ガラス玉(だま)の眼(め)がうすくともり、
恐怖にふるへながらも 手はおのづと合ひ、
ひたすらに祈(いの)りのなかに沒(ぼつ)する。
たれさがつた人閒の果物(くだもの)のやうに腐りかけ、
この 幻影(げんえい)の洪水をゆりうごかす おびただしい縊死者(くびくくり)の群(むれ)、
わたしは 大空(おほぞら)に廻轉する白い鴉(からす)をつかみ殺さう。