鬼城句集 秋之部 露
露 土くれにはえて露おく小草かな
露草弓弦はずれてむぐら罠
[やぶちゃん注:「むぐら罠」不詳であるが、中句から考えると熊などを捕獲することを目的としてアイヌの人々やマタギが山林に仕掛けた罠の一種である、仕掛け弓を言ったものか。アイヌの仕掛け弓クワリ(アイヌ語で「ク」は「弓」、「アリ」は「置く」)については、簡便に知るならば、北海道沙流(さる)郡平取町(びらとりちょう)二風谷(にぶたに)にある平取町立二風谷アイヌ文化博物館の公式サイト内のクワリのページを、詳細を知りたい向きは宇田川洋氏の学術論文「アイヌ自製品――仕掛け弓・罠」(PDFファイル)がよい。]
野分 せきれいの波かむりたる野分かな
野分すや吹き出されて龜一つ
山川の水裂けて飛ぶ野分かな
野分して蜂吹き落す五六疋
野分して早や枯色や草の原
山川に高浪たつる野分かな