日本その日その日 E.S.モース(石川欣一訳) 第二章 日光への旅 9 一路、人力車にて日光へ
翌朝、我々は夙く、元気よく起き出でた。今日は人力車で二十六マイルいかねばならぬ。人力車夫が宿屋の前に並び、宇都宮の人口の半数が群れをなして押し寄せ、我々の衣類や動作を好奇心に富んだ興味で観察する有様は、まことに奇妙であった。暑い日なので私は上衣とチョッキとを取っていたので、一方ならず派手なズボンつりが群衆の特別な注意を惹いた。このズボンつりは意匠も色もあまりに野蛮なので、田舎の人たちですら感心してくれなかった。
[やぶちゃん注:「二十六マイル」約41・8キロメートル。先に計測した通り、推定される宿泊地である現在の宇都宮市伝馬町から日光街道を辿ってみると、約40キロ弱であるが、高度があるから範囲内でぴったりと言ってよい。
「暑い日」六月三十日。]
車夫は総計六人、大きな筋肉たくましい者共で、犢鼻褌だけの素っぱだか。皮膚は常に太陽に照らされて褐色をしている。彼等は速歩で進んでいったが、とある村に入ると気が違いでもしたかのように駆け出した。私は人間の性質がどこでも同じなのを感ぜざるを得なかった。我国の駅馬車も田舎道はブランブランと進むが、村にさしかかると疾駆して通過するではないか。
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