早稻の香や入分右は有磯海 芭蕉 萩原朔太郎 (評釈)
早稻(わせ)の香や入分右は有磯海
港に近い早稻田道。右は有磯海の道標が立つて居るのである。旅中のスケツチであり、單なる寫生句ではあるけれども、風物の印象と氣分がよく現はされてる。
[やぶちゃん注:『コギト』第四十二号・昭和一〇(一九三五)年十一月号に掲載された「芭蕉私見」の中の評釈の一つ。昭和一一(一九三六)年第一書房刊「郷愁の詩人與謝蕪村」の巻末に配された「附錄 芭蕉私見」では本句を挙げていない。因みに、「奥の細道」に載る本句は私にとってすこぶる懐かしいものである。何故なら、恐らく芭蕉がこの句を詠んだであろう(そうでなかったとしても最もそのロケーションに相応しい)場所が、私が出た高校のすぐ近く、私の大好きだった富山県高岡市伏木国分の浜であるからである。]
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