鬼城句集 秋之部 出水/秋の水
出水 出水や牛引き出づる眞暗闇
出水して雲の流るゝ大河かな
出水や鷄流したる小百姓
泥水をかむりて枯れぬ芋畑
秋の水 秋水に孕みてすむや源五郎虫
[やぶちゃん注:「源五郎虫」は「げんごらう(げんごろう)」と訓じていよう。]
秋水に根をひたしつも疊草
[やぶちゃん注:「疊草」(たたみぐさ)は単子葉植物綱イグサ目イグサ科イグサ(藺草)
Juncus effusus var. decipens のこと。]
秋水や生えかはりたる眞菰草
[やぶちゃん注:「眞菰草」(まこもぐさ)は単子葉植物綱イネ目イネ科マコモ(真菰)Zizania latifolia。河川や湖沼の水辺に生育し、成長すると人の背丈ほどにもなる。葉脈は平行。花期は夏から秋で雌花は黄緑色、雄花は紫色を呈する。参照したウィキの「マコモ」によれば、肥厚した新芽の根元部分をマコモダケとして食用とする。また近年、スロー・フードとして見かけるようになった褐色を帯びたワイルド・ライス(カナディアン・ライス、インディアン・ライスとも呼称する)も本種の近縁種アメリカマコモ
Zizania aquatica の種子である。その他『日本では、マコモダケから採取した黒穂菌の胞子をマコモズミと呼び、お歯黒、眉墨、漆器の顔料などに用い』てきた、とある。]