飛驒山の質屋とざしぬ夜半の冬 蕪村 萩原朔太郎 (評釈)
飛驒山の質屋とざしぬ夜半の冬
冬の山中にある小さな村。交通もなく、枯木の林の中に埋つて居る。暖簾(のれん)をかけた質屋の店も、既に戸を閉めてしまつたので、萬象寂(せき)として聲なく、冬の寂寞とした闇の中で、孤獨の寒さにふるへながら、小さな家々が眠つてゐる。この句の詩情が歌ふものは、かうした闇黑、寂寥、孤獨の中に環境してゐる、洋燈のやうな人間生活の侘しさである。「質屋」といふ言葉が、特にまた生活の複雜した種々相を考へさせ、山中の一孤村と對照して、一層侘しさの影を深めて居る。
[やぶちゃん注:昭和一一(一九三六)年第一書房刊「郷愁の詩人與謝蕪村」の「冬の部」より。「闇黑」は「闇墨」であるが、誤字として訂した。]
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