乳白色の蛇 大手拓次
乳白色の蛇
みじろく冷氣(れいき)に絶望の垣根(かきね)をおしくづし、
曉闇(あかつきやみ)にひかる眞靑(まつさを)な星のやうに燃える眼をはびこらして
乳白色(にゆうはくしよく)のぢろぢろする小蛇(こへび)は 空間(くうかん)の壁(かべ)を匍(は)ひまはる。
美しい女の呼吸(いき)の動くやうな
むせかへる鈍重な香氣の花束(はなたば)だ!
この怪奇な 昏迷する瞬閒に
傾きかけた肉體は扮裝(ふんさう)をこらして憤(いきどほ)る。
[やぶちゃん注:太字「ぢろぢろ」は底本では傍点「ヽ」。]
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