霧・ワルツ・ぎんがみ――秋冷羌笛賦 印度童女の歌 中島敦
(以下四首 印度童女の歌)
阿媽(あま)つれて代官坂の朝を行く印度童女(わらはめ)あな黑きかも
[やぶちゃん注:「阿媽」アマはポルトガル語の“ama”の漢訳語で、元来は東アジア在住の外国人家庭に雇われていた現地人のメイドを指す。ここでは日本人(若しくは中国人などの黄色系東洋人)の侍女であろう。]
赤き毬を黑き童女(どうによ)が抱(かか)へつゝ幼稚園へぞ行くといふなる
[やぶちゃん注:「毬」は「まり」。]
下げ髮に黄なるリボンの鮮けきキマトライ氏が乙(おと)むすめかも
[やぶちゃん注:「キマトライ氏」不詳。識者の御教授を乞う。
「鮮けき」は「あざらけき」と訓ずる。]
色黑きキマトライ氏が乙むすめ今しむづかり童泣(わらべなき)する
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