噴水の上に眠るものの聲 大手拓次 《第1連》
噴水の上に眠るものの聲
[やぶちゃん注:本詩は全19連(底本では12・13連目が行空きなし改行で一続きの連のようになっているため18連であるが、これは版組の誤りにしか思われないので行空きを施した)からなる、長い散文詩であるが、僕はこの詩を始めて読んだ際、恰もウィトゲンシュタインの「論理哲学論考」を始めて読んだ時の感動に通ずるものを覚えた。それは一命題が恐るべき確度と強迫性を以って迫ってくる論理命題のようである。だから僕はこれを強いて恣意的に一連ずつ独立した言説(ディスクール)として示すことにする。ここでのみ大手拓次を読む者は、その一連ずつを――蛇を生殺すやうに、凌遅致死の刑を處せられつつあるやうに、焦燥的變態的強制的に、味わふことになる。――総てを示し終えた後に全詩を眺めることとしよう。従って標題の《 》は便宜上私が附したものである。……告白すれば――詩集「藍色の蟇」が終わってしまうのを――少しでも遅らせたい――という思いもないわけではないのである……]
《「噴水の上に眠るものの聲」第1連》
ひとつの言葉を抱くといふことは、ものの頂を走りながら、ものの底をあゆみゆくことである。