日本その日その日 E.S.モース(石川欣一訳) 第三章 日光の諸寺院と山の村落 19 男体山山頂から遙か富士山を臨む
我々は頂上に一時間いたが、百五十マイル向うの富士山が、地平線高く聳える景色は驚く可きものであった。高く登れば登る程、地平線は高く見える。この高さから富士を見ると、その巨大さと、またがる地域の広汎さとが、非常にはっきり理解出来る。図84の写生図に於て富士山の傾斜はあまりに急すぎるが、写生した時にはこう見えたのである。捲き雲の塊が富士の裾をかくしていたが、ワシントン山位の高さの山ならば、この雲の層に頂がかくれて了うことであろう。
[やぶちゃん注:「百五十マイル」241・4キロメートル。地図上で男体山と富士山頂の直線距離を求めると170・5キロメートルしかない。試みに、日光―東京―富士山頂の道なりのコースを概算して見ると240キロメートル前後は有にあるので、この数値はそれを算出したものらしい(にしても、あまり意味のある数値とは思われないが)。
「ワシントン山」原文“Mount Washington”。ニューハンプシャー州中北部の、先に出たホワイト・マウンテンのあるプレジデンシャル山脈の中の山名。標高1917メートル。ニューイングランドの最高峰でもあるが、男体山はそれよりも569メートルも高い。]
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