鬼城句集 秋之部 鶉/雀化蛤
鶉 鶉鳴く葎の宿のしるべかな
[やぶちゃん注:「しるべ」の「し」は底本では「志」の崩し字。]
鶉鳴き鳩鳴き雨となりにけり
雀化蛤 蛤に雀の斑あり哀れかな
[やぶちゃん注:「雀化蛤」は「雀蛤(はまぐり)と化す」と訓読し、「雀、大水に入りて蛤となる」「雀化して蛤となる」などとも言う。中国古代の天文学では一年を七十二候に区分したが、その九月の第二候目に「雀蛤と化す」と考えられていた。理由は単に雀の羽根の模様や色が蛤の殻の模様に似ていることからの化生説である。それが俳句の季語となったものではあるが、字数を食い、しかも短く用いようとすると分離させるしかなく、するとまたオリジナリティを出し難くなる、面白いが厄介な季語とは言えよう。「斑」は「ふ」と読む。]