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2013/10/27

日本その日その日 E.S.モース(石川欣一訳) 第三章 日光の諸寺院と山の村落 14 味噌汁と心太


Tokorotenn


図―77

 

 下層民が使用する食物の名を列記したら興味があるであろう。海にある物は殆ど全部一般国民の食膳にのぼる。魚類ばかりでなく、海胆(うに)、海鼠(なまこ)、烏賊(いか)及びある種の虫さえも食う。薄い緑色の葉の海藻も食うが、これは乾燥してブリキの箱に入れる。見受けるところ、これは普通の緑色海藻で、石蓴(あおさ)属の一つであるらしい。料理の或る物は見た目には食慾をそそるが、我々の味覚にはどうも味が足りない。私は大きに勇気をふるっていく皿かの料理を試みたが、実に腹がへっていたのにかかわらず、嚥(の)み込むことが出来たのはたった一つで、それはスープの一種であった。はじめブリキの鍋で、水とウスターシイヤ・ソースのような濃い色の、醗酵した豆から造るソースとを沸し、これに胡瓜みたいな物を薄く切って入れ、次には搾木を外したばかりの新しい白チーズによく似た物質の、大きなかたまりを加えるが、これは三角形に切ってあった。この最後の物質は豆を煮て、皮を取去るために漉し、それを糊状のかたまりに製造するのである。このスープは確かに養分に富んでいたし、すこし練習すれば好きになれそうである。もう一つの普通な食品は、海藻からつくつた、トコロテンと称するものである。これは長い四角形の白い物質で、必ず水につけてある。それを入れた洗い桶の横には、出口に二十四の間隙を持つ金網を張った四角い木製の水銃があり、この水銃の大きさに切ったトコロテンを喞子(ピストン)で押し出すと、針金がそれを長く細い片に切るという仕掛である。トコロテンはまるで味がなく、マカロニを思わせる。ソースをすこしつけて食う。図77は水銃と喞子とのスケッチで、出口の図は実物大である。

[やぶちゃん注:末尾の「実物大である」の「実物大」の下には石川氏によって『〔原著〕』という割注が入れられているが、これは冒頭の「訳者の言葉」にあるように底本の挿絵が原図より小さくなっているためである。

「薄い緑色の葉の海藻も食うが、これは乾燥してブリキの箱に入れる。見受けるところ、これは普通の緑色海藻で、石蓴(あおさ)属の一つであるらしい。」原文は“Seaweed, a thin green leaf, is also eaten ; it is dried and put up in tin boxes. It is apparently the common green seaweed, a species of ulva.”。板海苔のことを言っているが、それを同定するに緑藻植物門アオサ藻綱アオサ目アオサ科アオサ ulva 属としているのはいただけない。ulva 属は現在、添加用の青海苔(粉)やふりかけ海苔に加工されて汎用されてはいるが板海苔には今も昔も用いない。モース来日の頃は今や幻の高級品である焼海苔の浅草海苔(紅色植物門紅藻綱ウシケノリ目ウシケノリ科アマノリ属アサクサノリ Porphyra tenera を原材料とする)が、まさに正真正銘の浅草海苔として普通に食されていた。

「ウスターシイヤ・ソースのような濃い色の、醗酵した豆から造るソース」原文“dark in color like Worcestershire sauce”。“Worcestershire sauce”は所謂、ソース、ウースター・ソース、ウスターソースのこと(野菜や果物の搾り汁や煮出し汁に砂糖・酢・食塩や香辛料を加えて調整、カラメルなどを加えて茶褐色にした液体調味料で名称は英国旧ウースターシャー州で創製されたことに因む)。言わずもがな、味噌である。

「胡瓜みたいな物」とあるが、葱とは思われない。地方によっては瓜を薄切りにして味噌汁の種とするから、それか。

「搾木を外したばかりの新しい白チーズによく似た物質の、大きなかたまりを加えるが、これは三角形に切ってあった」「三角形に切ってあった」というのがやや不審であるが、これも言わずもがな、豆腐である。

「水銃」原文は“syringe”。これは銃というよりは注射器・スポイト・浣腸器の謂いである。

「喞子(ピストン)」音は「ショクシ」。まさに英語(原文)“piston”の漢訳語。]

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