噴水の上に眠るものの聲 大手拓次 《第8連》
ひとつの言葉に觸れることは、うぶ毛の光るももいろの少女の肌にふるへる指を濡れさせることである。指はにほひをきゝ、指はときめきを傳へ、指はあらしを感じ、指はまぼろしをつくり、指は焰をあふり、指はさまざまの姿態にあふれる思ひを背負ひ、指は小徑にすゝり泣き、なほさらに指は芬香の壺にふかぶかと沈みてあがき、壺のやうな執著のころもに自らを失ふのである。
[やぶちゃん注:「芬香」は「ふんかう(ふんこう)」と読む。よい匂い。芳香に同義。]
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ひとつの言葉に觸れることは、うぶ毛の光るももいろの少女の肌にふるへる指を濡れさせることである。指はにほひをきゝ、指はときめきを傳へ、指はあらしを感じ、指はまぼろしをつくり、指は焰をあふり、指はさまざまの姿態にあふれる思ひを背負ひ、指は小徑にすゝり泣き、なほさらに指は芬香の壺にふかぶかと沈みてあがき、壺のやうな執著のころもに自らを失ふのである。
[やぶちゃん注:「芬香」は「ふんかう(ふんこう)」と読む。よい匂い。芳香に同義。]