中島敦短歌拾遺(4) 昭和12(1937)年手帳歌稿草稿群より(12) 妖しの歌群
しつとてふことしりそめしかのとしのクリスマスの夜ゆきふりてゐ し
なにしかもちかひすてけむとさよなかをいだきてなきぬかなしとに あらず
[やぶちゃん注:別案として、
なにしかもちかひすてけむとをさとこにいだきてなきぬかなしとに あらず
を復元出来るが、「をさとこに」は意味不明。「長常に」で永くず っとの謂いか? 識者の御教授を乞う。]...
にんげんよかなしかりけりいやはてのちかひすつべきよはもきたり ぬ
あひてあはぬいくよへにけむこのちかひいやかしこしとはだもふれ ずて
あからひくはだもふれじと誓ひけり吾を信ずとふ言のかなしくて
[やぶちゃん注:別案として、
あからひくはだもふれじと思ひけり吾を信ずとふ言のかなしくて
を復元出来る。]
かぜさむきえちぜんぼりのうらまちにわかれしよはもつねわすらえ ず
[やぶちゃん注:「えちぜんぼり」越前掘。東京駅から南東に一キ ロメートルほど行った隅田川左岸、現在の中央区新川一・二丁目辺 りの旧名。]
みすゞかるしなののをとめふゆくればゆきをこほしむあはれなりけ り
みすゞかるしなののをとめふゆくればゆきこほしむをいとほしと思 ふ
なれいまだ女にあらじはしきやしながくちのへにちゝのかぞする
[やぶちゃん注:別案として、
なれいまだ女にあらじはしきやしながくちすへばちゝのかぞする
を復元出来る。]
なれいまだ女ならじよ紅く小さきながくちのへはちゝのかぞする
みすゞかるしなの乙女がほゝのへの紅りんごなしつややけきかも
[やぶちゃん注:別案として、
みすゞかるしなの乙女がほゝのへの紅りんごなしつやつやしもよ
を復元出来る。]
ふみ月のひゞやの午後に小雨ふり一つかさして歩みし日はも
あひあひのかさはづかしくわれひとりぬれて行きけるその雨もこひ し
[やぶちゃん注:別案として、
あひあひのかさをおもなみわれひとりぬれて行きけるその雨もこひ し
を復元出来るが、意味不明。「をももなみ」は「面(おも)も無み 」の仮名遣の誤りではなかろうか?]
きりさめのけぶれる中にさきむれしカンナの色も今わすらえず
ふんすいのもとにしてふと止りけり
[やぶちゃん注:ここの上句で途切れている。]
目をとぢし君がまぶたにうす靑く蛇の目の傘のかげさしてゐし
よりそひてあひいだきけりこともなく一つじやのめの傘の中に
[やぶちゃん注:「しつとてふ」以降、ここまで(その前の二首「 あによりも」の全平仮名表記と、「高橋や」のロケーションからは この二首を含んでもよい)、一連のもので、しかのその内容たるや 、続いて「危険がアブナい」、謂わば――妖しの歌群――と私は名 づけたい(続く歌群は明らかに書き方が異なる)。]
なにしかもちかひすてけむとさよなかをいだきてなきぬかなしとに
[やぶちゃん注:別案として、
なにしかもちかひすてけむとをさとこにいだきてなきぬかなしとに
を復元出来るが、「をさとこに」は意味不明。「長常に」で永くず
にんげんよかなしかりけりいやはてのちかひすつべきよはもきたり
あひてあはぬいくよへにけむこのちかひいやかしこしとはだもふれ
あからひくはだもふれじと誓ひけり吾を信ずとふ言のかなしくて
[やぶちゃん注:別案として、
あからひくはだもふれじと思ひけり吾を信ずとふ言のかなしくて
を復元出来る。]
かぜさむきえちぜんぼりのうらまちにわかれしよはもつねわすらえ
[やぶちゃん注:「えちぜんぼり」越前掘。東京駅から南東に一キ
みすゞかるしなののをとめふゆくればゆきをこほしむあはれなりけ
みすゞかるしなののをとめふゆくればゆきこほしむをいとほしと思
なれいまだ女にあらじはしきやしながくちのへにちゝのかぞする
[やぶちゃん注:別案として、
なれいまだ女にあらじはしきやしながくちすへばちゝのかぞする
を復元出来る。]
なれいまだ女ならじよ紅く小さきながくちのへはちゝのかぞする
みすゞかるしなの乙女がほゝのへの紅りんごなしつややけきかも
[やぶちゃん注:別案として、
みすゞかるしなの乙女がほゝのへの紅りんごなしつやつやしもよ
を復元出来る。]
ふみ月のひゞやの午後に小雨ふり一つかさして歩みし日はも
あひあひのかさはづかしくわれひとりぬれて行きけるその雨もこひ
[やぶちゃん注:別案として、
あひあひのかさをおもなみわれひとりぬれて行きけるその雨もこひ
を復元出来るが、意味不明。「をももなみ」は「面(おも)も無み
きりさめのけぶれる中にさきむれしカンナの色も今わすらえず
ふんすいのもとにしてふと止りけり
[やぶちゃん注:ここの上句で途切れている。]
目をとぢし君がまぶたにうす靑く蛇の目の傘のかげさしてゐし
よりそひてあひいだきけりこともなく一つじやのめの傘の中に
[やぶちゃん注:「しつとてふ」以降、ここまで(その前の二首「
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