菜の花や月は東に日は西に 蕪村 萩原朔太郎 (評釈)
菜の花や月は東に日は西に
これも明るい近代的の俳句であり、萬葉集あたりの歌を聯想される。萬葉の歌に「東の野に陽炎の立つ見えて顧みすれば月傾きぬ」といふのがある。
[やぶちゃん注:昭和一一(一九三六)年第一書房刊「郷愁の詩人與謝蕪村」の「春の部」より。
「東の野に陽炎の立つ見えて顧みすれば月傾きぬ」は「万葉集」巻一の第四十八番歌、柿本朝臣人麿が自身の長歌(第四十五番歌)に附した四首の短歌(反歌)の内の第三首目。人麿の歌としては最も人口に膾炙するものと言える。最後の句は万葉仮名では「月西渡」で、旧訓にはそのまま「月西渡る」と詠む説もある。]