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2013/10/16

日本その日その日 E.S.モース(石川欣一訳) 第三章 日光の諸寺院と山の村落 7 蜘蛛について


M68


図―68

M69

図―69

 

 図68は高さ三フィートの青銅の鐘と、長さ八フィートの丸太棒と、それから、どんな風にそれをつるして鐘をつくかを示している。図69は私の昆虫箱を調べつつある日本の昆虫採集家。このスケッチをした時、彼はそれ等昆虫の日本名を私に教えていて、私は彼のいうことが一つも判らずに、つづけさまに礼をいうのであった。

[やぶちゃん注:「三フィートの青銅の鐘と、長さ八フィートの丸太棒」青銅製の鐘の丈は約90センチメートル、撞木の長さは約2・4メートル。]

70

図―70

M71
図―71

 

 日光付近で採集している間に、私は保護色の著しい例の二、三を見た。その一は路傍で見受ける小さな雨蛙が、常に大きな綠の木葉の上に坐っているのだが、その葉の緑と蛙の色とが全く同じであった。私は、また、緑色の蜘蛛(くも)が同様にして、樹の葉を占領しているのに気がついた。蜘蛛は沢山いて、そして面白い。ジオメトリックの種類〔我国の女郎蜘蛛の如く、幾何の図のように規則的な巣をつくる蜘蛛の種類〕に属する、ある奇妙な蜘蛛は、巣を垂直に近く張る代りに、水平的に張り、放射線の間は普通見受けるものよりも狭く、中心には多くの電光形線によって編まれた筵(むしろ)がある。この筵の部分は、他の部分が殆ど見えない位なのに反して、色が白く非常に目につきやすい。蜘蛛は細長く、すらりとしていて、中心をすこし離れた所に、中心に面してとまり、巣をつつくと、荒々しくゆするのであった(図70)。もう一つの巣は、私がそれ迄に見たもののどれとも異っていた。それは直径一インチばかりの隠蔽した蛛網(ウェッブ)の小さな巣で、不規則形に五、六本の細い帯が流れ出している。蜘蛛はその天蓋の下にかくれていて、放射している細帯が攪乱されると走り出す(図71)。

[やぶちゃん注:「ジオメトリックの種類」原文は“the geometric kind”。直下に石川氏の『〔我国の女郎蜘蛛の如く、幾何の図のように規則的な巣をつくる蜘蛛の種類〕』とある。これは言わずもがなであるが、そういう生物学的な狭義の限定分類グループを指しているのではなく、極めて幾何学的にして複雑な網を張るクモ類を指して言っている。なお、この部分にモースは“A GEOMETRIC SPIDER'S WEB”というヘッダーを附している。

「ある奇妙な蜘蛛は、巣を垂直に近く張る代りに、水平的に張り、放射線の間は普通見受けるものよりも狭く、中心には多くの電光形線によって編まれた筵(むしろ)がある。この筵の部分は、他の部分が殆ど見えない位なのに反して、色が白く非常に目につきやすい。蜘蛛は細長く、すらりとしていて、中心をすこし離れた所に、中心に面してとまり、巣をつつくと、荒々しくゆするのであった」この叙述のうち、網を「水平的に張り」、虫体が「細長く、すらりとしてい」るという点で一致するのは節足動物門鋏角亜門クモ綱クモ目コガネグモ上科アシナガグモ科 Tetragnathidae のアシナガグモ類である。この科に含まれるものには水平円網を張る例が多い。頭胸部は縦長で、歩脚はいずれも細長く、特に第一脚が長いものが多い。但し、「中心には多くの電光形線によって編まれた筵(むしろ)がある。この筵の部分は、他の部分が殆ど見えない位なのに反して、色が白く非常に目につきやすい」という叙述は一致しないので困った。取り敢えず、アシナガグモについてウィキの「アシナガグモ科」に基づいて述べておくと、この類では腿節にまっすぐに立ったような毛が綺麗な列を成して並んでいるが、これは聴毛と言ってこれによって音(振動)を感知すると言われる。アシナガグモ科の名はタイプ属であるアシナガグモ属 Tetragnatha から来ている(本属に限らず同科のクモは他の属でも足の細長いものが多い)。殆どの種が水平円網を張り、特にその中央に穴が開いた形の無轂網(むこしきあみ)と呼ばれる網を張る。この円網はおおよそ水平に張られる点以外は、見かけはコガネグモ上科コガネグモ科 Argiopinae 亜科コガネグモ属 Argiope などに見られる標準的なものに見えるが、網の中心の縦糸の集まったところが異なる。普通の円網ではここに横糸と同じように、しかしより密に糸が張られており、ちょうどクモの座る座布団といった格好になっているが、この類の網ではこの中央に穴が開いており、円網の中央にはやや幅広い糸の帯で縁取られた穴となっている。これを無轂網というが、モースの叙述には合わない。また、アシナガクモ類は網の中央の裏側に定位するものが多いのに、モースの叙述では「中心をすこし離れた所に、中心に面してとま」っているとあって、これも合わない(「すこし」とあるが図70ではかなり離れているからである)。この網の中心の形状はコガネグモ属 Argiope に特徴的であるが、しかし彼らが張るのは圧倒的に垂直網である。私はクモ類は守備範囲でないため、ここまでである。クモ類にお詳しい方の御教授と同定を乞うものである。

「直径一インチばかりの隠蔽した蛛網(ウェッブ)の小さな巣で、不規則形に五、六本の細い帯が流れ出している。蜘蛛はその天蓋の下にかくれていて、放射している細帯が攪乱されると走り出す」「一インチ」は2・54センチメートル。これは葉の上に天幕状の網を造巣するハグモ上科ハグモ科Dictynidae ハグモ科のハグモの一種ではあるまいか? 一例を挙げると同科のネコハグモ Dictyna felis について「虫ナビ」の「ネコハグモ」には、『葉上に天幕状網を造る小さいハグモ』で、『葉上に造る網は隙間が多く、虫が引っ掛かりそうに見えないが、知らずに進入した小さい虫を狩りするには最適な造りのよう』に思われ、『通常は葉の中心部で頭胸部を足で隠すようにして、じっとしている』。『体色は暗褐色で白い毛が生えており、腹部は茶褐色で周囲が白い毛で覆われている』とある。グーグルの画像検索「ネコハグモ」を見ると、図71によく一致するものが見受けられる。]

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