『風俗畫報』臨時増刊「江島・鵠沼・逗子・金澤名所圖會」より江の島の部 21 先哲の詩(32)
雪後遊畫島 安脩
鼈頭山現畫圖中。
萬仭驚看天造工。
雪滿懸崖埀玉樹。
雲晴斜日財瑤宮。
凌波神女羅裙冷。
賀鶴仙人素影空。
借問秦年汎楂客。
寧知此地十洲通。
[やぶちゃん注:底本には作者名はない。補った。前の七言絶句に続く、雪後の彼の七言律詩。
雪後、畫(ゑ)の島に遊ぶ 安脩
鼈頭の山 現はれり 畫圖の中(うち)
萬仭 驚き看る 天造の工
雪 懸崖に滿ちて 玉樹に埀り
雲 晴れ 斜めに日さして 瑤宮を財(たから)となす
凌波の神女 羅裙(らくん) 冷たく
賀鶴の仙人 素影(そえい) 空(むな)し
借りに問ふ 秦年(しんねん) 楂(いかだ)を汎(うか)べし客(かく)
寧ろ知る 此の地 十洲に通ずるを
「凌波」波に載ってそれを自在に操るの謂いか。
「羅裙」薄物の裳(も)。
「賀鶴」めでたき鶴といった美称か。
「素影」月の光。
「秦年」秦の頃の謂いか。
「楂を汎べし客」前の注が正しいとすれば、これは全くの直感に過ぎないが、これは秦の始皇帝に東方の三神山(仙山である蓬莱・方丈・瀛州(えいしゅう)を指す)に長生不老(不老不死)の霊薬があると具申し、始皇帝の命を受けて三千人の童男童女と百工を従え、五穀の種を持って東方に船出して、平原広沢の地を得、そこの王となって戻らなかったという方士徐福のことではあるまいか?]
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