『風俗畫報』臨時増刊「江島・鵠沼・逗子・金澤名所圖會」より江の島の部 21 先哲の詩(29)
月夜宿江島僧院 平賀周藏
洞口雲晴孤島頭。
良宵投宿倚香樓。
諸天月傍龍宮動。
千仭珠當鮫室浮。
幽梵爾時心地靜。
妙音何處帝妃遊。
更闌坐訝傳淸怨。
波響夜驕湘水秋。
[やぶちゃん注:作者は既出。
月夜、江の島の僧院に宿す 平賀周藏
洞口 雲晴れて 孤島の頭(たう)
良宵 投宿して 香樓に倚る
諸天 月 龍宮に傍らして動き
千仭の珠 當に鮫室(かうしつ)たるべく浮く
幽梵 爾時 心地 靜かなり
妙音 何處にか 帝妃 遊ぶ
更(こう)闌(た)けて 坐すに訝る 淸怨(せいゑん)を傳ふるを
波響 夜(よ)は驕(おご)る 湘水の秋
・「鮫室」既注であるが再掲する。鮫人(中国で南海に棲むという人魚に似た想像上の異人。常に機を織り、しばしば泣くが、その涙が落ちると玉になるという)の水中の居室。
・「幽梵」この世ならぬ神妙なる梵鐘の音。
・「淸怨」沁み通るようなある侘しさ。]
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