『風俗畫報』臨時増刊「江島・鵠沼・逗子・金澤名所圖會」より江の島の部 21 先哲の詩(28)
舟泊繪島 平賀周藏〔字子英〕
淡靄輕煙路渺漫。
海風不便上潮難。
平沙維艇收漁網。
斷岸燃燈下釣竿。
虛郭三聲暮笛響。
孤蓬一夜疎鐘寒。
榜人鳴櫂天將曙。
唯有還家片夢殘。
[やぶちゃん注:平賀周蔵(延享二(一七四五)年~享和四・文化元(一八〇四)年)は江戸中後期の広島出身の漢詩人。号は蕉斎・白山園・独醒庵・白山。著書に「独醒庵集」「白山集」「蕉斎筆録」。
舟にて繪の島に泊る 平賀周藏〔字は子英。〕
淡靄(たんあい) 輕煙 路(みち) 渺漫(べうまん)
海風 便(びん)なく 潮を上ぐることも難し
平沙 艇を維(つな)ぎて 漁網を收め
斷岸 燈を燃して 釣竿(てうかん)を下(おろ)す
虛郭 三聲 暮笛 響き
孤蓬 一夜 疎鐘(そしよう) 寒(さび)し
榜人(ばうじん) 櫂を鳴らし 天は將に曙(あけぼの)とならんとするに
唯だ 還家片夢の殘のみ有り
「渺漫」渺渺や渺茫と同じい。果てしなく広がっているさま。
「榜人」この「榜」は舵や櫂を指し、船頭、舟人のこと。
「還家片夢」望郷の念を宿した儚い夢を言うか。]
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うっかりしてアップするのを落した一篇があったので挿入する。これは本来ならば、『風俗畫報』臨時増刊「江島・鵠沼・逗子・金澤名所圖會」より江の島の部 21 先哲の詩の、
(23)と(24)の間にあるべき詩
である。ここに挿入して訂正する。
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