鬼城句集 冬之部 冬の雲
冬の雲 冬雲を破りて峯にさす日かな
過關原
冬雲の降りてひろごる野づらかな
[やぶちゃん注:本「鬼城句集」の場合、前書を持つものは非常に少ない。それらは皆、鬼城が句理解のためにあるべきものと配慮して附されたものと見て間違いなく、この場合も、そうしたより効果的な映像効果を齎すためのものと考えられ、とすれば「過關原」は最も知られたかの岐阜県の「關ヶ原を過ぐ」以外には考えられず、「過」ぐとするところからは東海道本線の車窓詠としてよいであろう。殆んど高崎から出ることのなかった鬼城の句の中では珍しい羈旅吟である(但し、既に注した通り、高崎は彼の郷里ではない。再掲しておくと、鬼城は慶応元(一八六五)年に鳥取藩士小原平之進の長男として江戸に生まれたが、八歳(明治五(一八七二)年)の時に群馬県高崎市に移り住んだ(十一歳で母方の村上家の村上源兵衛の養子となって村上姓を名乗る)。後に高崎裁判所司法代書人となって以後は亡くなるまでの一生を殆んど高崎で過ごしている。ただ、この事蹟については未だ私には多くの不審がある。こちらの私の注をお読み戴きたい)。]
冬雲の凝然として日暮るゝ