人体模型図
今朝方、目の覚める直前――夢ではなく半覚醒時に――
小学校6年の春……
とある日曜日のこと……
友人と一緒に理科の先生から借り受けた、理振の特殊な小冊子型の蛇腹式になった人体解剖図
――内臓や骨格が形そのままに切りぬかれて何層にもなって畳み込まれてあって捲ってゆくタイプのもの――
を持って……
鎌倉は大船の中ありとある本屋を経巡っては……
「こういう人体解剖図を売っていませんか」……
「こういう人体解剖図を売っていませんか」……
「こういう人体解剖図を売っていませんか」……
と尋ね廻ったのを蒲団の中で何故か思い出していた……(間違っては困るのだが、これは「夢」ではなく事実なのである)
無論、どこの本屋にもそんなものは売っておらず……
どこの店員も……
僕の差し出す黴臭い奇体な人体解剖図の冊子を気味悪そうにちょいと摘まんでは捲りながら……
同じ気味悪そうな眼を僕向けていたのを思い出す……
(友人は二軒目からはその白眼に耐えきれずに店の外で待っていた、その何故か後ろ姿も思い出した)
ハレーションする春の陽射しの街角の……
人体解剖図を携えて自転車に乗って市中を彷徨する二人の少年……
何だ……僕は僕の寺山修司をとっくに演じていたんじゃないか……
その人体解剖図はきっとね――僕の顔をしていたんだよ……
[やぶちゃん注:僕は母と同様、慶応大学医学部に献体している。]