『風俗畫報』臨時増刊「江島・鵠沼・逗子・金澤名所圖會」より江の島の部 21 先哲の詩(24)
遊畫島宿山寺 山村良由〔字君裕 號蘇門〕
金龜島秀彩雲間。
求寺羊腸薄暮攀。
窓外波濤千里外。
巖頭樓閣萬尋山。
月觀鷗鳥心偏靜。
耳伴松風夢亦閑。
一夜自疑天上住。
何堪明日向人寰。
[やぶちゃん注:底本では「山田良由」とあるが、国立国会図書館の近代デジタルライブラリーの「相模國風土記」の「藝文部」で訂した。山村蘇門(寛保二(一七四二)年~文政六
(一八二三)年)は江戸時代中後期の武士。通称は甚兵衛。尾張名古屋藩木曾代官第九代。天明の飢饉を乗り切って天明八(一七八八)年に家老となった。学芸を好み、先に出た大内熊耳に師事、詩・書画に優れた。名の良由は「たかよし」と読む。著書に「忘形集」(共著)・「清音楼集」など(講談社「日本人名大辞典」に拠る)。
畫(ゑ)の島に遊び山寺に宿る 山村良由〔字は君裕、號は蘇門。〕
金龜島 秀(しう)たり 彩雲の間
寺を求む 羊腸 薄暮の攀(はん)
窓外 波濤 千里の外(そと)
巖頭 樓閣 萬尋の山
月 鷗鳥(おうてふ)を觀(み)て 心 偏へに靜かなり
耳 松風(しようふう)を伴ひて 夢 亦た閑かなり
一夜 自(おのづ)から疑ふ 天上の住(ぢゆう)たらんかと
何ぞ堪へん 明日 人寰(じんくわん)に向ふを
「萬尋」万仞に同じい。1尋(ひろ:本邦の慣習的な長さの単位で、両手を左右に伸ばした際の指先から指先までの長さを基準とし、一尋は五尺(約一・五一五メートル)乃至は六尺(約一・八一六メートル)。縄・釣糸の長さや水深に用いることが多く、水深の場合には六尺と既定する。)の一万倍(約一万八千メートル相当)。転じて、非常に高い(深い)ことを指す。
「月觀鷗鳥心偏靜」は月(=明鏡=作者の心)が飛ぶ鷗を「觀(み)」て月(=明鏡=作者の心)が只管に澄み渡って静かなという心象であろう。
「人寰」人間界。]
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