鬼城句集 冬之部 雪
天文
雪 遠山の雪に飛びけり烏二羽
屋根の雪雀が食うて居りにけり
大雪や納屋に寐に來る盲犬
棺桶を雪におろせば雀飛ぶ
雪松ののどかな影や雪の上
道あるに雪の中行く童かな
棺桶に合羽かけたる吹雪かな
ぼろ市のはつる安火に吹雪かな
[やぶちゃん注:「はつる」は「解(はつ)る」で、「ぼろ市」のシークエンスにふさわしいこれまた「安火」、しょぼくれた焚き火の、そのともすればほつれがちな炎に、「吹雪」が吹きつけているというのであろう、と私は読む。また、「はつる」は「ぼろ市の果つ」、「ぼろ市」も最終日となって、売れないまことの襤褸ばかりが残っている景観も連想させて、より寂寥感を増しているとも言えるように思われる。大方の御批判を俟つ。]