猿楽の由来(戸井田道三)
柳田国男先生の「山島民譚集」によれば猿は水神であり、馬の守護神であったとの事である。猿舞わしは厩舎をまわって祈禱するのが仕事であった。わたしは猿楽という名称は散楽の単なる音韻転化ではなく、猿に扮しておこなう何かの先行芸能があって、それに散楽がひきよせられたのだ思っているが、そういう猿楽の狂言であったからこそ二次的変化をとげて別派をなしていた猿舞わしの芸を舞台に再現する「靱猿」のできたものであろうと考えている。(戸井田道三「狂言面の用法から」(岩崎美術社1988年刊「叢書 フォークロアの視点 5 仮面」)より)