『風俗畫報』臨時増刊「江島・鵠沼・逗子・金澤名所圖會」より江の島の部 21 先哲の詩(25)
中秋遊畫島賞月 高惟馨
鼈嶼東南縮地開。
海天秋色抱蓬萊。
探珠月湧驪龍窟。
懸鏡潮明玉女臺。
有客欲攀仙桂去。
何人更汎斗槎囘。
今宵獨坐鼉磯上。
萬里觀濤酒一杯。
[やぶちゃん注:高惟馨は前出。「仙桂」は底本「仙柱」であるが、国立国会図書館の近代デジタルライブラリーの「相模國風土記」の「藝文部」で訂した。
中秋、畫(ゑ)の島に遊に月を賞(め)づ 高惟馨
鼈嶼(べつしよ)の東南 縮地 開き
海天 秋色 蓬萊を抱く
珠を探して 月 湧けり 驪龍(りりよう)の窟(くつ)
鏡を懸げて 潮 明たり 玉女の臺
客有り 仙桂(せんけい)に攀ぢんと欲して去り
何人ぞ 更に斗槎を汎(うか)べて囘(かへ)らん
今宵(こよひ) 獨坐す 鼉磯(だき)の上
萬里 觀濤 酒一杯
「仙桂」仙界にあるという月桂の樹。仙界の象徴。
「斗槎」仙人が仙界と行き来するための筏。「斗」は小さいという意か。
「鼉磯」「鼉」はワニの一種若しくは水棲する想像上の怪物鼉龍(だりょう)で、それらの硬い甲を磯の岩に喩えたものと思われる。]
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