『風俗畫報』臨時増刊「江島・鵠沼・逗子・金澤名所圖會」より江の島の部 21 先哲の詩(19)
遊畫島風雨波惡不能探窟 川榮壽
孤島人間外。
綵雲千里連。
窟臨滄海上。
宮秀碧山巓。
風雨來搖樹。
波濤起蹴天。
明珠探不得。
何處驪龍眠。
[やぶちゃん注:川栄寿なる人物は明治一九(一八八六)年刊松村精一郎編「江山勝概」上冊の巻頭に漢文の「遊日光山紀行」なるものをものしており、同書目次には作者名『川 榮壽』の下に割注を入れ、『字萬年 江戸人』とある。底本では二句目の「綵雲」が「緣雲」となっているが、国立国会図書館の近代デジタルライブラリーの「相模國風土記」の「藝文部」で訂した。
畫(ゑ)の島に遊ぶも、風雨・波(なみ)惡しくして、窟を探る能はず 川榮壽
孤島 人間(じんかん)の外(がい)
綵雲(さいうん) 千里に連なる
窟 臨む 滄海の上(しやう)
宮 秀(ひい)づ 碧山の巓(てん)
風雨 來つて 樹を搖らし
波濤 起つて 天を蹴る
明珠 探るを得ず
何處(いづく)にか 驪龍(りりよう) 眠らん
「綵雲」彩雲。
「驪龍」黒龍(こくりゅう)のこと。全身の鱗が黒い。特に驪竜 (りりょう) と呼ばれた場合は、顎の下に貴重な珠を持っているとされる。光を苦手とし、普段は深い海底に一匹で棲息し、光のない新月の夜にのみ、その姿を海底から現わすとされることから、海又は闇を司る存在として、魚を乱獲する者を海底に引きずり込むなど、一般には災厄を齎すものとして形象されることが多いが、水墨画との相性の良さから黒龍はしばしば画題ともなる(ウィキの「黒竜」の記載を参考にした)。]
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