中島敦 南洋日記 十一月二十日
十一月二十日(木)(晴)
終日海上に在り、平穩。將棋、麻雀、雜談、午睡、時に蘇東坡を讀む。甲板上に一小箱あり、硝子を以て覆ふ。中にヤドカリ數十あり、。大・小はさゞゑに近きものより小は小豆粒の如きに至る迄おのがじし、重き殼を擔ひて、うごめき、走り攀ぢ、或ひは、コプラを食ふ狀、面白し、
[やぶちゃん注:「ヤドカリ」これは台湾以南のインドや太平洋諸島等に広範囲に分布するヤドカリの仲間で、成体が海岸近くの陸上をテリトリーとするところの、軟甲(エビ)綱十脚(エビ)目抱卵(エビ)亜目異尾(ヤドカリ)下目ヤドカリ上科オカヤドカリ科オカヤドカリ属
Coenobita の一種である。全世界で本邦にも棲息するオカヤドカリCoenobita cavipes の他、十五種が確認されている(本邦では他にオオナキオカヤドカリ
Coenobita brevimanus他七種)。水陸両用に適応するため、貝殻の中に極少量の水を蓄えておいて柔らかい腹部が乾燥するのを防ぎ、陸上での鰓呼吸も可能である。但し、定期的な水分補給や水交換は必須で、水辺からそう遠くへ離れることは出来ない。同じオカヤドカリ科 Coenobitidae に属するヤシガニ Birgus latro(一属一種)と同じく木登り様の行動が上手く、小さい体から予想もつかないほど高い木に登ることもある。単子葉植物綱タコノキ目タコノキ科タコノキ属アダン
Pandanus odoratissimus や双子葉植物綱ナス目ヒルガオ科サツマイモ属グンバイヒルガオ Ipomoea pes-caprae などの海浜植物の群落付近で見掛けられ、昼間は石の下などに潜んでいることが多い。成体は海岸に打ち上げられた魚介類の肉や植物(アダンやここに示されたコプラ=ヤシの実など)など幅広い種類の食物を取る雑食性であるが、比較的菜食を好み、一度に摂食する量は極少ない(以上は主にウィキの「オカヤドカリ」に拠った)。]
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