日本その日その日 E.S.モース(石川欣一訳) 第十章 大森に於る古代の陶器と貝塚 13 鯉の滝登りの絵 / 端午の節句とこいのぼり
漆器の盃や掛物によく使用される装飾の主題は、鯉、あるいは滝をのぼる鯉であって、必ず尾を彎曲した形で描かれる。多分産卵するために、激流又は滝を登る魚を写生したものであろう。これは向上、又は固守の象徴であって、男の子たちに、より高い位置へ進むことを教える教訓である。
五月五日には、男の子達の為の国民的祭礼がある。話によると、その一年以内に男の子が生れた家族は、長い棒のさきに、続か布かでつくつた大きな魚をつけてあげる権利を持っている。この魚の口は環でひろげられ(この環でつるすのだが)、たいていの時は吹いている風が魚をふくらませ、そして最も自然に泳ぐような形でこれをなびかせる。ある物は長さ十フィートにも及ぶこれ等の魚が、この大きな都会いたる所でゆらゆらしたり、ばたばたしたりする所は、実に不思議な光景である。
[やぶちゃん注:「十フィート」約3メートル。底本では次に有意な一行空けがある。]
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