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2014/01/29

大和本草卷之十四 水蟲 蟲之上 苗蝦

【外】

苗蝦 漳州府志曰海物異名記謂之醬蝦細如針

芒海濱人醢以爲醬淡紅色今按ニ一寸許アル小ヱ

ヒナリ此マヽニテ大ニナラス備前筑後ナトノ泥海ニ多シ

海邊ノ潮入溝河ニアリ小毒アリ味ヨケレトモ性不好

ナシモノトシ又ホシテ遠方ニヲクル痔ト便血瘡疥ヲ發ス

此病アル人不可食

〇やぶちゃんの書き下し文

【外】

苗蝦(あみ) 「漳州府志」に曰く、『「海物異名記」は、「之を醬蝦〔しやうか〕と謂ふ。細なること、針芒〔しんばう〕のごとし。海濱の人、醢〔ししびしほ〕にして以つて醬と爲す。淡紅色。」と。』と。今、按ずるに一寸許りある小ゑびなり。此のまゝにて大きにならず。備前・筑後などの泥海に多し。海邊の潮の入る溝河〔こうが〕にあり。小毒あり。味、よけれども、性、好まれず。なしものとし、又、ほして遠方にをくる。痔と便血・瘡疥を發す此の病ひある人、食ふべからず。

[やぶちゃん注:現在、狭義には軟甲綱真軟甲亜綱フクロエビ上目アミ目 Mysida に属する小型甲殻類の総称であるが、ここで貝原が示すのは、それに含めて、《本当のエビ類の小型種》」であるところのアキアミ(ホンエビ上目十脚(エビ)目根鰓(クルマエビ)亜目サクラエビ上科サクラエビ科アキアミ Acetes japonicas)であるとか、オキアミ(ホンエビ上目オキアミ目オキアミ科 Euphausiidae 及びソコオキアミ科 Bentheuphausiidae に属するオキアミ類)をも含んだ謂いである。前者の狭義のアミ類は、形状は見た目全く狭義のエビ類(真軟甲亜綱ホンエビ上目 Eucarida)にしか見えないが、分類学上は「アミ」は「エビ」ではないので注意されたい(私の教師時代の印象ではこの誤解は広く蔓延しているように感じる)。ウィキの「アミ」によれば、『エビ類と異なり、胸肢の先ははさみ状にならない。背甲は胸部前体を覆うが、背側との癒合は第三胸節までである。雌は腹部に育房を持つ。また、アミ目では』(この狭義の「アミ」に含まれる中層遊泳性で二百メートル以深の深い海に棲息するロフォガスター目 Lophogastrida は除く)、『尾肢内肢に一対の「平衡胞」と呼ばれる球状の器官を持つことで、他のグループと容易に識別できる』とある。ここにも『利用上、アキアミのような小型のエビ類やオキアミと区別されない場合がある』と明記されてある。一応、真正のアミ類について、同ウィキによって記載しておくと、体長は最小種で二ミリメートル程、最大種であるロフォガスター目オオベニアミ Gnathophausia ingens では三十五センチメートルを超えるがこれは例外で、一般には五~三〇ミリメートル前後の小型種が殆どで本文でも記載に積極性が認められないように、漁獲対象としては一般的ではない。本邦の江戸期から現在までのアミ漁は真正の「アミ」に属するアミ目アミ科イサザアミNeomysis intermedia(本種は汽水域というよりさらに塩分濃度の低い環境に適応した種の一つである)を対象とした霞ヶ浦のイサザアミ漁が知られており、ほかにも現在、本文の「筑後」とも地理的に一致する有明海、また、厚岸湖などでも漁獲されているとある。なお、他に私の電子テクストである寺島良安の「和漢三才圖會 卷第五十一 魚類 江海無鱗魚」の「海糠魚 あみ あめじやこ」も参照されたい。また、同巻では多くの箇所にアミ類と思しいものがエビ類と混載されてある。関心のある向きは同ページ内検索でそれこそ「アミ」をかけられたい。

「漳州府志」前項「蝦蛄」注参照。

「海物異名記」書名であることは分かったが、詳細不詳。識者のご教授を乞う。ところが、これを調べるうちに当の「海物異名記」のより正確と思われる記載を発見した(こちらの龔鵬程ブログ記載

   《引用開始》

塗苗 《海物異名記》:“謂之醬蝦,如針芒,海濱人鹹以為醬,不及南通州,出長樂港尾者佳,梅花所者不中食。”

   《引用終了》

後半部分は産地の良し悪し、最後は中毒しない旬を言っているか。

「針芒」針の先端。

「醢〔ししびしほ〕」塩辛。

「醬」所謂、魚醤(ぎょしょう・うおびしお)・塩魚汁(しょっつる)のことである。

「一寸」三・〇三センチメートル。

「性、好まれず」これはあまりに小さいために食用雑魚としても商品化出来ず、生では足が速くて嫌われたということか。

「なしもの」「鱁鮧」と書き、音で「チクイ」、訓じて「なしもの」。塩辛・魚醬(うおびしお)のこと。

「瘡疥」疥瘡で「はたけがさ」、所謂、皮膚病の「はたけ」であろう。主に小児の顔に硬貨大の円形の白い粉を噴いたような発疹が複数個所発する皮膚の炎症性角化症の一つ顔面単純性粃糠疹(ひこうしん)。ウィルス感染原因が疑われているが感染力はない。寧ろ、これを一種のアレルギー反応と見るならば、既にしてこの注意書きは知らずに激しい甲殻類アレルギーによる合併症の様態を示しているのだとも読めるような気もしてくるではないか。]

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