夜 萩原朔太郎
夜
なまぐさいみどりの中から
柳しろじろとかすみをかけ
遠火にもえづるうぐひすな
どこかの古い沼のほとりの
びらびら光る藻ぐさの中で
心臟のくさりかけた醉つぱらひが
蛙のやうにたたき殺された。
[やぶちゃん注:筑摩版全集第三巻「未發表詩篇」より。「うぐひすな」は「鶯菜」であるが、萩原朔太郎の使用する場合のそれは、コマツナ・アブラナなどの、まだ若くて小さい菜を広く指しており、種を断定は出来ない。]
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