橋本多佳子句集「海燕」 昭和十一年 六甲ホテル
六甲ホテル
[やぶちゃん注:兵庫県神戸市灘区六甲山町南六甲一〇三四番地、六甲山山上に現在も営業する阪急阪神第一ホテルグループの六甲山ホテルのことであろう。昭和四(一九二九)年に宝塚ホテル分館として開業した(後に独立)。古塚正治設計による開業当時の建物は現存しており、二〇〇七年に国の近代化産業遺産に登録されている(以上はウィキの「六甲山ホテル」に拠る)。]
霧あをし紫陽花霧に花をこぞり
霧ごもり額(がく)の濃瑠璃が部屋に咲く
[やぶちゃん注:「濃瑠璃」は「こきるり」と読むと思われるが、「額の」「咲く」という二語からはどうみても具体な花を指しているとしか思われない。しかし「濃瑠璃」と通称する植物や花はない。しかし「瑠璃草」はある。シソ目ムラサキ科ルリソウ
Omphalodes krameri は落葉林のやや湿った場所に植生し、花期は五~六月で花弁は五枚。花の形や色は同科のムラサキ科ワスレナグサ(勿忘草)属 Myosotis とかなり似ている。グーグル画像検索「Omphalodes
krameri」及び「Myosotis」をリンクしておく。]
炉火すゞし山のホテルは梁をあらは
[やぶちゃん注:「炉火」の「炉」は底本表記字を用いた。]
霧にほひホテル夕餐燈(ひ)がぬくき
[やぶちゃん注:「燈」は底本の用字。]