明恵上人夢記 32
32
一、同月八日の夜、夢に云はく、緣智房(えんちばう)來りて告げて曰はく、「一々に留守を置き候はばや。今より御分に成るべく候也。僧都知るべからず候」と云々。
[やぶちゃん注:短いだけに、逆にシチュエーションが摑み難い。無論、訳には自信がない。
「同月八日」建永元(一二〇六)年六月八日。
「緣智房」不詳。「夢記」には既に「法智房」「鑑智房」という名が出、孰れも明恵と同行の修行僧である。
「僧都」不詳。但し、次の「33」の夢の冒頭に「又、眞惠僧都之許に到る」とあり、文脈からは同一人物であるようにとれるように書かれているとも私は思う。底本の注で「33」の「眞惠僧都」については『長良流の従五位下藤原宗隆男で東寺一長者となった大僧正法務真恵か』とある(但し、彼が東寺長者に補任されたのは明恵の没六年後の嘉禎四・暦仁元(一二三八)年九月である)。]
■やぶちゃん現代語訳
32
一、同月八日の夜、見た夢。
縁智房が私のところへ来たって告げて言うのである。
「いちいちに――住持の留守の仮初の代理を置いておく――それで、よう御座るか? 最早、今よりあなたがその立場となるべきで御座ろう。そうしてそれは、ここにおらぬ僧都の知ったことでは御座るまいほどに。」と。……
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