日本その日その日 E.S.モース(石川欣一訳) 第十一章 六ケ月後の東京 3 市中嘱目2
私は一人の男が紙に艶(つや)を出しているのを見た。竹竿の一端にすべっこい、凸円の磁器の円盤がついていて、他の一端は天井に固着してあるのだが、天井が床を去ること七フィート半なのに、竹竿は十フィートもあるから、竿は大いに攣曲している。その結果磨滑常に大きな力が加わり、人は只竹の端を紙の上で前後に引張りさえすればよい(図303)。いろいろな仕事をやる仕掛が、我々のと非常に違うので、すぐに注意を引く。彼等は紙に艶を出す装置のように、竹の弾力によって力を利用する。また私は二人の小さな男の子が、ある種の堅果か樹皮かを、刻むのを見た。刻み庖丁は、丸い刃を木片にくっつけた物で、この木片から二本の柄が出ていて、柄の間には重い石がある(図304)。子供達は向きあって坐り、単に刻み庖丁を、前後にゴロゴロさせるだけであった。
図―304
[やぶちゃん注:ここに現れた二種の器具について(後者は薬研のそれに錘が附いているもののようには見える)知らない。識者のご教授を乞う。
「七フィート半」約2メートル29センチ。
「十フィート」約3メートル。]