橋本多佳子句集「海燕」 昭和十年 曼珠沙華
曼珠沙華
曼珠沙華咲きて日輪衰へず
曼珠沙華折りたる手にぞ火立(ほだち)もゆ
曼珠沙華火立の花瓣うづまける
野路ゆきて華鬘つくらな曼珠沙華
[やぶちゃん注:「華鬘」は「けまん」で花鬘とも書く。仏前を荘厳(しょうごん)するために仏殿の内陣や欄間などに掛ける仏具。金銅製・牛革製で、円形又は楕円形の形のものに唐草や蓮華を透かし彫りにし、下縁に総状の金物や鈴を垂らしたもの。]
曼珠沙華折りて露草わすれたる
曼珠沙華日はじりじりと襟を灼く
曼珠沙華日は灼けつつも空澄めり