鬼城句集 冬之部 河豚
河豚 河豚の友そむきそむきとなりにけり
將門と純友と河豚の誓かな
[やぶちゃん注:前句「そむきそむき」の後半は底本では踊り字「〱」。次句は平将門と藤原純友が盟約を交わして共同謀議による天慶の乱をそれぞれに起こしたという、室町期の成立と思われる「将門純友東西軍記」辺りによる伝承に基づく歴史仮想吟。同書には偶然に京都で出会った将門と純友が、承平六(九三六)年八月十九日に比叡山に登って、平安城を見下ろしながら「將門は王孫なれば帝王となるべし、純友は藤原氏なれば關白にならん」と誓約、双方が国に帰って反乱を起こしたとするが、それに関わる「河豚」の故事は知らない。単に乱の顛末を射程にした、河豚を食らわば肝までもといった、死を賭した不惜身命の祈誓という諧謔的謂いと取り敢えずは採っておく。]