そらの はるけさ 八木重吉
こころ
そらの はるけさを かけりゆけば
豁然と ものありて 湧くにも 似たり
ああ こころは かきわけのぼる
しづけき くりすたらいんの 高原
[やぶちゃん注:「くりすたらいん」“crystalline”は形容詞で、「水晶のような・水晶から成る」及び物理化学に於ける「結晶(質)の・結晶体から成る」、「透明な」の意。なお、辞書を見ると、“crystalline heaven”(=crystalline sphere)という単語がある。これはその他の記載などと読み比べてみると、古代ギリシアのプトレマイオスの天動説に於いて考えられた宇宙を構成する二つの球体の一つで、天の外圏である球体(天球“celestial spheres”)と恒星界との間にあると想像された球体(但し、プトレマイオスは「恒星は天球に張りついているか若しくは天球に空いた穴である」と述べているから、この球体は殆ど天球内側に密着する球体ということになるように思われる)の謂いらしい。無関係かもしれないが“heaven”は気になる(重吉がこの単語を見知っていればなおのことである)、イメージを膨らませるにはよいと思われたのでここに記しおくこととした。]