萩原朔太郎 短歌五首 明治三八(一九〇五)年四月
あはた〻し燃ゆる災の火車を忘れていにしつらき君かな
[やぶちゃん注:「あはた〻し」「災」はママ。底本改訂本文は、
あわただし燃ゆる炎の火車を忘れていにしつらき君かな
と訂す。]
た〻願ふ君の傍へにある日をば夢のようなるその千年をば
[やぶちゃん注:「ようなる」はママ。「た〻」は初出「だ〻」であるが、初出誌の誤植と断じて訂した。底本全集改訂本文も「ただ」。]
われ君を戀はん戀しき心より君を思へば胸ただ火なり
綾唄やあるひは牛の遠鳴や、君まつ秋の野の更けにけり
[やぶちゃん注:初出「更けにげり」。初出誌の誤植と断じて訂した。]
風ふきぬ木の葉地をうつ秋の夜はまたる〻君かさびしさ思へ
[やぶちゃん注:以上五首は『白虹』第一巻第四号(明治三八(一九〇五)年四月発行)の「小鼓」欄に掲載された。萩原朔太郎満十八歳。]