耳嚢 巻之八 口中妙藥の事
口中妙藥の事
昆布を煎じて口中を洗(あらひ)、西瓜の上の皮を黑燒にして附(つけ)れば奇々妙々治す。舌疽を愁(うれひ)し人に施せしに立所(たちどころ)に治せしと、官位長嶋某密(ひそか)に傳之(これをつたふ)。
□やぶちゃん注
○前項連関:特になし。民間療法シリーズ。
・「昆布」昆布自体の黒焼きが口内炎に効果があるという記載がネット上には散見される。口臭予防薬としての効能も挙げられてある。
・「西瓜の上の皮」ネット上の記載には西瓜の皮を焦がして粉にして口に含むと口内炎に効くとあり、また現在の漢方では西瓜の皮は重要な薬の原料でコレステロール減少効果や血管拡張作用を持つともある。
普通、私たちは、果肉だけを食べて皮は捨ててしまいますが、中国では皮を漬け物にしたり、前菜料理に使ったり、フルに利用されています。
皮の部分に、栄養が多いことを考えれば、実に合理的なムダのない利用法といえます。
・「官位」岩波のカリフォルニア大学バークレー校版は『官医』とする。底本の鈴木氏注に、『長島家は瑞得が半井驢庵の門人で綱吉に仕え、五世の孫秀門(ヒデユキ)は、名を元説といい、天明五』(一七八五)『年番医となった』とある。番医は番医師で若年寄支配、営中の表方にあって医療を受け持ち、また、桔梗の間に宿直して不時の際の治療に当たった官医のこと。
■やぶちゃん現代語訳
口内炎の妙薬の事
昆布を煎じたもので口の中を洗浄した後、西瓜の一番上の部分の皮を黒焼きにしてつければ、信じ難いほどに即効で治る。
「舌に出来た腫れ物を愁えていた患者にこの処方を施したところ、立ち所に治癒致いた。」
と御番医師の長嶋某殿、こっそりとこの処方を私に伝えて下された。
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