日本その日その日 E.S.モース(石川欣一訳) 第十章 大森に於る古代の陶器と貝塚 48 鉄扇の驚くべき用法(ホンマかいな!?)
東京に沢山ある古道具屋で、時折り鉄の扇、というよりも、両端の骨が鉄で出来ている扇や、時として畳んだ扇の形をした、強直な鉄の棒を見受ける。この仕掛は昔、サムライ階級の人々が、機に応じて持って歩いた物だそうである。交戦時、サムライが自分の主を訪れる時、彼は侍臣の手もとに両刀を残して行かねばならなかった。習慣として、襖を僅に開け、この隙間に訪問者は頭をさし込むと同時に低くお辞儀をし、両手を下方にある溝のついた場所へ置くのであるが、彼はこの溝に例の扇を置いて、襖が突然両方から彼の頸をはさむことを防ぎ、かくて或は暗殺されるかも知れない彼自身を保護するのであった。これは老いたるサムライが私に語った所である。鉄扇はまた、攻守両用の役に用いることも出来ると彼はいった。
[やぶちゃん注:「古道具屋」原文は“the bric-a-brac shops”。“bric-a-brac”はフランス語で「古道具・骨董品」、俗語で「古道具屋・骨董商」(他に比喩的に「古くさい手法」の意もある)を意味する“bric-à-brac”由来で、古い小物類(装飾品,・小さな家具)・古物の意。
「鉄の扇」“an iron fan”。鉄扇が護身具であったことは知っているものの、こんな驚くべき防備用法は知らなかった。確かに使おうと思えば、そのように使用は出来ようが……ちょっと……信じ難い感じもしないではないのだが……是非とも識者の御教授を乞うものである。
「交戦時」原文“In hostile times”。これは誤訳であろう。「絶対君主制の時代には」「封建時代には」ではないか?]
« 日本その日その日 E.S.モース(石川欣一訳) 第十章 大森に於る古代の陶器と貝塚 48 鉄扇の驚くべき用法(ホントかい!?) | トップページ | 日本その日その日 E.S.モース(石川欣一訳) 第十章 大森に於る古代の陶器と貝塚 49 教え子の昆虫少年を訪ねる »