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2014/01/28

生物學講話 丘淺次郎 第十章 卵と精蟲 二 原始動物の接合(3) 夜光虫の接合

Yakoutiyuusetugou
[「夜光蟲」の接合]

 

 海の表面に無數に浮んで夜間美しい光を放つ「夜光蟲」も單細胞生物であるが、これも常には分裂によつて蕃殖し、その間にときどき接合をする。夜光蟲の身體は恰も梨か林檎の如き球形で柄の根本に當る處に口があるが、二疋が接合する時にはこの部分を互に合せて身體を密接させ、始めは瓢簞の如き形となり、後には次第に融け合つて終には全く一個の球となつてしまふ。「ざうり蟲」では接合する二疋の蟲の身體は始終判然した境があり、たゞ一個處で一時癒著するだけに過ぎぬが、夜光蟲の方では、始め二疋の蟲が接合によつて全く一疋となり終り、同時にその核も相合して一個となる。そして接合の後には、この一疋となつた大きな蟲が續々分裂して蕃殖すること、恰も接合後の「ざうり蟲」などと同じである。

[やぶちゃん注:海産プランクトンである原生生物界渦鞭毛植物門ヤコウチュウ綱ヤコウチュウ目ヤコウチュウ科ヤコウチュウ Noctiluca scintillans は動物分類学では古くは植物性鞭毛虫綱渦鞭毛虫目に分類し、最近では渦鞭毛虫門に配する。一般的な渦鞭毛藻とは異なり、葉緑体を持たず、専ら他の生物を捕食する従属栄養性生物である。昼間には赤潮として姿を見せ、赤潮の原因生物としては属名そのままの「ノクチルカ」と表記されることが多い。参照したウィキの「ヤコウチュウ」によれば、『海産で沿岸域に普通、代表的な赤潮形成種である。大発生時には海水を鉄錆色に変え、時にトマトジュースと形容されるほど濃く毒々しい赤茶色を呈する。春~夏の水温上昇期に大発生するが、海水中の栄養塩濃度との因果関係は小さく、ヤコウチュウの赤潮発生が即ち富栄養化を意味する訳ではない。比較的頻繁に見られるが、規模も小さく毒性もないため、被害はあまり問題にならないことが多い』。『ヤコウチュウは大型で軽く、海水面付近に多く分布する。そのため風の影響を受けやすく、湾や沿岸部に容易に吹き溜まる。この特徴が海水面の局所的な変色を促すと共に、夜間に見られる発光を強く美しいものにしている。発光は、細胞内に散在する脂質性の顆粒によるものであるが、なんらかの適応的意義が論じられたことはなく、単なる代謝産物とも言われる』。『原生生物としては非常に大きく、巨大な液胞(或いは水嚢; pusulen)で満たされた細胞は直径』1~2ミリメートルにまで達する。『外形はほぼ球形で、1ヶ所でくぼんだ部分がある。くぼんだ部分の近くには細胞質が集中していて、むしろそれ以外の丸い部分が細胞としては膨張した姿と見ていい。くぼんだ部分の細胞質からは、放射状に原形質の糸が伸び、網目状に周辺に広がるのが見える。くぼんだ部分からは1本の触手が伸びる。細胞内に共生藻として緑藻の仲間を保持している場合もあるが、緑藻の葉緑体は消滅しており、光合成産物の宿主への還流は無い。細胞は触手(tentacle)を備え、それを用いて他の原生生物や藻類を捕食する。触手とは別に、2本の鞭毛を持つが、目立たない』。『一般に渦鞭毛虫は体に縦と横の溝を持ち、縦溝には後方への鞭毛を、横溝にはそれに沿うように横鞭毛を這わせる』のが普通であるのに対し、『ヤコウチュウの場合、横溝は痕跡程度にまで退化し、横鞭毛もほぼ消失している。しかし、縦溝は触手のある中心部にあり、ここに鞭毛もちゃんと存在する。ただし、それ以外の細胞が大きく膨らんでいるため、これらの構造は目立たなくなってしまって』、『およそ渦鞭毛虫とは思えない姿』をしている。『特異な点としては、他の渦鞭毛藻と異なり、細胞核が渦鞭毛藻核ではない(間期に染色体が凝集しない)普通の真核であるとともに、通常の細胞は核相が2nである。複相の細胞が特徴的である一方、単相の細胞はごく一般的な渦鞭毛藻の形である』点である。『他の生物発光と同様、発光はルシフェリン-ルシフェラーゼ反応による。ヤコウチュウは物理的な刺激に応答して光る特徴があるため、波打ち際で特に明るく光る様子を見る事ができる。または、ヤコウチュウのいる水面に石を投げても発光を促すことが可能である』とある。ここで問題となる生活環については、『通常は二分裂による無性生殖を行う。有性生殖時には遊走細胞が放出されるが、これは一般的な渦鞭毛藻の形態をしており、核も渦鞭毛藻核である』とあって接合の記載はない。奈良教育大学の石田正樹教授の研究室公式サイトにある村万由子氏の夜光虫の培養法 Culture Method of Noctilukaの詳細なライフ・サイクルの解説を見ても、一九九三年の報告として成体と遊走子(説により遊走子と遊走子)の間での接合の記載はあるが、丘先生のいうような明らかな成体個体同士の接合に関する記載はどうも見当たらない。丘先生がここで「ときどき接合をする」と叙述する以上、それはおかしい。それともそもそもが丘先生が述べているのは、この現在、同型配偶子説と異型配偶子説の二つがあるところの、『遊走子形成から接合子形成に至る過程』によって『新たな成体』が生ずるという新知見(無論、丘先生の時代から見ての意である)のことを単純に成体同士の接合と言っているのかも知れない。専門の識者のご教授を乞うものである。]

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