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2014/01/30

耳嚢 巻之八 油蟲呪の事

 油蟲呪の事

 

 木の葉草の葉にあぶら蟲生じきたなげなるを、人々忌み嫌ふは常なり。予が知れる石川氏のもとへ、植木屋を呼(よび)て植替抔せし時、彼(かの)油蟲の除方(のぞきかた)もあるべしと尋(たづね)しに、いとやすき事なり、前錢(まへせん)十六文と認(したため)建札(たてふだ)すれば、油蟲の愁(うれひ)なしといゝしゆゑ、滑稽にて申(まうす)や、かゝる事あるべくもなしと笑(わらひ)しに、左思召(さおぼしめ)さばまづ試(こころみ)に札を立(たて)給へと申(まうす)ゆゑ、召(めし)仕ふ者抔へ申付(まうしつけ)、可笑(をかしき)事ながら札建(たて)しに、絶へて油蟲の愁ひなし。物見柴居(ものみしばい)など、錢を不出(いださず)見物するを油蟲と諺(ことわざ)に云(いへ)るも、何ぞ子細やあらんと語りぬ。

 

□やぶちゃん注

○前項連関:特になし。一つ前の「寐小便の呪法の事」と呪(まじな)いシリーズと、その馬鹿馬鹿しい程度に於いても直連関。

・「油蟲」昆虫綱有翅亜綱半翅(カメムシ)目腹吻亜目アブラムシ上科のアブラムシ科 Aphididae/カサアブラムシ科 Adelgidae/ネアブラムシ科 Phylloxeridae に属する昆虫の総称。アリマキ(蟻牧)とも呼ぶ。参照したウィキの「アリマキ」によれば、『植物の上でほとんど移動せず、集団で維管束に口針を突き刺して師管液を吸って生活する』。『アリと共生し、分泌物を与えるかわりに天敵から守ってもらう習性や、単為生殖によっても増え真社会性を持つことなどから、生態や進化の研究のモデル昆虫ともなっている』とある。栽培野菜などでは寄生されることで葉の色が黄色く変色したり、アブラムシが出す甘い汁によって見栄えが悪くなったりし、またモザイク病ウイルスも媒介することから防除される害虫扱いとなっている。現在は『有機リン系(マラチオン、MEP、アセフェート等)、合成ピレスロイド系(ピレトリン等)、クロロニコチル系(アセタミプリド等)などの多くの殺虫剤が有効である。しかし、最近の研究結果では、特に有機リン系や合成ピレスロイド系に対し、高い薬剤抵抗性を持つ傾向が顕著であるとの報告が多数ある。アブラムシは薬剤抵抗性を持ちやすいので、あまり同一の殺虫剤の散布を長期間繰り返すよりも、2-3種の系統の違うものを定期的に散布していく方法がある。また、最新の防除法として、アブラムシを捕食あるいは、アブラムシに寄生する、寄生バチ類、テントウムシ類、ヒラタアブ類などの天敵類を利用した生物的防除が、ハウス栽培野菜を中心に実施されつつある。但し、天敵類の多くは薬剤に対して抵抗性を持たず、農薬との併用による総合的病害虫管理 (IPM) を行う際には一考の余地がある』。『また、葉を巻いてその中に潜む種類や、はっきりした虫えいを形成するものもある。このようなものは虫体に殺虫剤が接触しにくいので、浸透移行性のある殺虫剤が効果的である』。『化学的なものを使用せずに除去する場合、脂肪分の多い牛乳を薄めたものを霧吹きで散布すると、牛乳が乾燥するときにアブラムシの気門を塞いで窒息死させるので有効であると言われたことがある』。また『同じ原理を利用し、濃度調整したでんぷんや食用油脂を主成分としたものが農薬として商品化されている』とある。流石にこの金のかからない「前錢十六文」立札法は記載されていない。

・「前錢」売買及び各種見世物や芝居小屋などに於いて、その代金や木戸銭を先に支払うことをいう。

・「柴居」底本では「柴」の右に『(芝)』と訂正注がある。

・「油蟲」には、知られたその体表面の印象からのゴキブリ(昆虫綱ゴキブリ目 Blattodea)の別名以外にも、人に付き纏ってただで遊興・飲食をするものを嘲って言ったり、また特に、遊郭での冷やかしの客を指しても言った。これらの俚諺は察するにやはりこの真正のアブラムシ(アリマキ)の群れたか習性から主に生じたもののように私には思われる。

 

■やぶちゃん現代語訳

 

 油虫除けの呪(まじな)いの事

 

 木の葉や草の葉に油虫(蟻牧)が無暗に寄りたかって汚げに見ゆるは、人々の忌み嫌うところで御座る。

 以下は、私の知れる石川某氏の話で御座る。

 

 我らが屋敷元へ植木屋を呼んで庭の植木の植え替えなど致いた折り、かの油虫の駆除の仕方も、これあろうほどにと、直(じか)に訊ねてみたところが、

「へい、そりゃたいそう簡単なこって、

――前錢(まえせん)十六文

と認(したた)めた立て札をすりゃあ、これ、油虫の愁いなんざ、あっという間に雲散霧消でござんす。」

と申すゆえ、

「冗談で申すか、そのようなこと、これ、あろうはずも、ないわ!」

と笑(わろ)うたところが、

「そう思し召しになられるであれば、まず、試みに札をお立てなせえ!」

と申したによって、召し仕(つこ)う者なんどへ申し付け、馬鹿馬鹿しいことながらも、またどこか面白く思うた節もあったによって、かく

――前錢十六文

と黒々と墨書致いた札を建ててみたところが、――いや!――これ、絶えて油虫の害のこれなくなって御座った。……

……物見や芝居なんどで、木戸銭を出ださず見物致す不届き者を、俚諺にて『油蟲(あぶらむし)』と申すこと……これ何ぞ、子細・連関のあらんか?……」

 

と石川氏、真顔で語って御座ったよ。

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