橋本多佳子句集「海燕」 昭和十二年 荒るゝ關門
荒るゝ關門
機關止みふぶける船に艀を寄す
黑き舷船名もなく雪に繫る
[やぶちゃん注:「舷」はふなべり・ふなばたの謂いであるが、音で「ゲン」と詠んでいよう。私の恣意的正字化へ異義を持たれる方へお訊ねしたい。――この「繫る」(つながる)の「繫」の字は底本のママである。あなたはこの字を普段書きますか? いやさ、書けますか?――と――]
舷側の十字を紅く吹雪の中
雪の航水夫(かこ)垂直の階を攀づ
雪を航き朝餐のぬくきパンちぎる
[やぶちゃん注:「朝餐」は「あさげ」と訓じているか。]
航海燈かがやき雪の帆綱垂る
[やぶちゃん注:「燈」は底本の用字。]
雪を航きひとりの船室(キヤビン)燈をともす
[やぶちゃん注:「燈」は底本の用字。カタカナのルビの拗音表記の問題については、先行する句で本文「フレップ」を「フレツプ」と表記していることに鑑み、しばらく拗音化しないこととする。以下、この注は略す。]

