おもひで 八木重吉
おもひでは 琥珀(オパール)の
ましづかに きれいなゆめ
さんらんとふる 嗟嘆(さたん)でさえ
金色(きん)の 葉の おごそかに
ああ、こころ うれしい 煉獄の かげ
人の子は たゆたひながら
うらぶれながら
もだゆる日 もだゆるについで
きわまりしらぬ ケーオスのしじまへ
郭寥と 彫られて 燃え
焰々と たちのぼる したしい風景
[やぶちゃん注:「嗟嘆でさえ」「きわまりしらぬ」はママ。
「ケーオス」“khaos”。カオス。混沌。
「郭寥」は「くわくれう(かくりょう)」と読む。広々として寂しいさま。また、もの寂しいさま。普通「廓寥」と書くが、「郭」は広いの意があるから、漢字の意味としてはこれでも通じる。]
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