耳嚢 巻之八 加川陸奧之助教歌の事
加川陸奧之助教歌の事
賀川が一族の娘、人の許に嫁(かす)と聞(きき)て、反物やうの品餞別として贈りしに添(そへ)て詠(よめ)る、
そむくなよ人に隨ふみちのくの細布衣むねあはずとも
□やぶちゃん注
○前項連関:特に感じられない。何よりこれは「卷之七 加川陸奧介娘を嫁せし時の歌の事」と重複する。あちらとは加川自身の娘への教訓歌である点と、和歌が、
わするなと人にしたがふみちの奧のけふの細布むねあわずとも
と第一句と下句に微細な表現差があるのみである。しかも鈴木氏は第一句を「わするなよ」の誤りかとするから、
わするなよ人にしたがふみちの奧のけふの細布むねあわずとも
でますます酷似し、しかも岩波のカリフォルニア大学バークレー校版の巻の七の当該条では、
忘るなよ人に從ふみちのくのけふの細布(ほそぬの)むねあわずとも
とあるのである。根岸センセ! また、やらかっしゃいました! 十巻千話に偽りありですぞ! 以下、注も基本、「卷之七 加川陸奧介娘を嫁せし時の歌の事」に譲る。
・「細布衣」は「ほそぬのごろも」と読む。「細布」に同じ。「卷之七 加川陸奧介娘を嫁せし時の歌の事」の同歌の私の注を参照のこと。
■やぶちゃん現代語訳
加川陸奧之助殿の教訓歌の事
賀川殿の一族の娘が、人のもとに嫁すと聞きて、反物のようなる品を餞別として贈られたが、それに添えて詠める歌、
そむくなよ人に随ふみちのくの細布衣むねあはずとも
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