生物學講話 丘淺次郎 第十章 卵と精蟲 三 卵 (4) ヒトの卵巣
(い)子宮 (ろ)膀胱 (は)卵巣 (に)輸卵管 (ほ)直腸]
婦人の腹を正面から切り開いて腸などを取り去ると、膀胱の後に恰も茄子を倒にした如き形の子宮が見えるが、その左右に一つづつ三糎餘のお多福豆のやうな卵巣がある。鳥類の卵巣または世人がつねに「たひ」の子とか「かれひ」の子とか呼んでいる魚類の卵巣とは違ひ、哺乳類の卵巣は一見して直に卵の塊とは思はぬが、よく調べて見ると、やはり大小不同の卵細胞の集まり成つたもので、その中の成熟したものから順々に離れ出るのである。そして一旦離れ出た後は、或は精蟲と合して子宮内で新たな個體の基となるか、或は精蟲に會わずしてそのまゝ死ぬか、いづれにしても親の身體との組織の連絡は絶えるが、それまでは慥に母親の身體の一部を成して居たものである。
[卵巣の斷面]
[やぶちゃん注:「お多福豆」阿多福豆(おたふくまめ)は形がおたふくの面に似ていることからついた大粒の豆をつけるソラマメの一品種名又はその豆を用いて製した甘納豆の菓子名。]
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