座布團 山之口貘
座 布 團
土の上には床がある
床の上には疊がある
疊の上にあるのが座蒲團でその上にあるのが樂といふ
樂の上にはなんにもないのであらうか
どうぞおしきなさいとすゝめられて
樂に坐つたさびしさよ
土の世界をはるかにみおろしてゐるやうに
住み馴れぬ世界がさびしいよ
[やぶちゃん注:初出は昭和一〇(一九三五)年二月号『文藝』(改造社)。思潮社二〇一三年九月刊「新編 山之口貘全集 第1巻 詩篇」解題によれば、掲載誌には後の「數學」とともに総題「數學」の中の一篇として掲載された、とある。本詩は標記通り、各行間が優位に広い。なお、原書房刊「定本山之口貘詩集」では、この行空けはない。【2014年6月7日追記】思潮社二〇一三年九月刊「新編 山之口貘全集 第1巻 詩篇」と対比検証し、注の一部を変えた。【二〇二四年十月十七日追記・改稿】国立国会図書館デジタルコレクションの山之口貘「詩集 思辨の苑」(昭一三(一九三八)年八月一日むらさき出版部刊・初版)を用いて(当該部はここから)、正規表現に訂正した。]
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