中島敦 南洋日記 十二月二十五日
十二月二十五日(木) 雨
朝來涼し。昨夜の高松氏との約束にては今朝七時前に西班牙教會に同行する筈なりしも、目覺めしのは七時半。慌てて朝食をすませ、教會に行く。高松氏在らず。着飾れる島民等多く集まり、己に彌撒の最中なり。赤きチヤンチヤンコを着たる老僧、六木の大蠟燭をつけし聖僧像の前に脆く。童子二人その後に從ふ。合唱。九時前式終る。後に聞けば、高松氏も寐坊せしなりと。夜、
[やぶちゃん注:「朝來」老婆心乍ら「ちょうらい」で朝からずっと、「西班牙」老婆心乍ら「ポルトガル」、老婆心乍らクリスマスのミサの光景である。]