日本その日その日 E.S.モース(石川欣一訳) 第十一章 六ケ月後の東京 22 塵芥車 / 金魚鉢 / インク壺
私は塵芥車に(それは手車である)、如何にも便利に、また経済的に尾板を取りつけた方法を屢々見た。それは単に一本の棒に、窓掛みたいな具合に、一枚の粗末な莚をくっつけた物で、この短いカーテンの末端は、車の尾端からたれ下り、塵芥の重量は莚を押えつけ、棒は莚が落ちることを防ぐ(図317)。称讃すべきは、この物全体の簡単と清潔とである。かくの如き簡単な実際的の装置が、屢々我々の注意を引く。屋敷の中の道路の末端で、新しい地面を地ならししている。すでに出来上った場所の上を、塵芥車を引いて行く代りに、彼等はすべてのバラ土を莚に入れ、棒にひっかけて二人で肩に担う。遠くから見ると、蟻の群みたいである。
図318は、瓢形に吹いた硝子(ガラス)器である。板にとりつけ、中に金魚が入れてあるが、花生に使用することも出来る。
学校へ通う子供達は、外国風のインク瓶に糸を結びつけ、手にぶら下げる(図319)。いろいろな小さな物品は、こんな風に、糸を結び、手を通す環をつくってはこぶ。糸は紙で出来ていて、たいてい非常に強い。紙を長い条片に切って振り、膝の上でまるめるのだが、一片一片を捩り合せる方法は、手に入ったものである。これで包をしばったりするが、我国の麻紐ほどの強さがあるらしく思われる。
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