篠原鳳作句集 昭和五(一九三〇)年十一月
花葛や巖に置かれし願狐
[やぶちゃん注:「願狐」稲荷でよく見かける眷属像であるところの狐の置物のこと。四句後の句柄からは桜島での嘱目吟か。]
颱風や坊主となりし靑芭蕉
蟻の列御輿もありて續きけり
薩摩路や茶店といはず懸煙草
[やぶちゃん注:「懸煙草」採取したタバコの葉を縄に挟んで屋内や軒先に吊るし、乾燥させること。また、その葉をいう。有季俳句では秋の季語とする。]
熔岩を傳ふ筧や葛の花
[やぶちゃん注:以上五句は十一月の発表句。]