橋本多佳子句集「海燕」 昭和十四年 大浦天主堂
昭和十四年
大浦天主堂
雷をきき聖なる燭のもとにわれ
雷雨去り聖歌しづかなりつづく
虹ひくく天主の階を降(お)りんとする
[やぶちゃん注:年譜上ではこの年に九州地方への旅は認められない。一見、前年八月の三女啓子と四女美代子を連れての阿蘇・雲仙・長崎に旅行した際の嘱目吟の再考句か追想吟とも思われるのだが、後に出る「九州への旅」を読むとクリスマスを詠んだ句が見いだされ、多佳子は前年かこの年の末にも九州へ再び船旅をしたものか? しかしまた、ここは「雷雨」で十二月の景とも思われぬ。識者のご教授を乞うものである。]